アブライ・シソコ インタビュー
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◆ フォルカー・ゲッツェ氏とコラボレーションに至った経緯は?
2枚のソロ・アルバム 『ディアム(Diam)』と『ル・グリオ・ルージュ(Le Griot Rouge)』を発表して、次はソロではない作品を望んでいました。
フォルカー・ゲッツェ氏との企画は長年の願いでした。
私たちはお互いに相手の作品に惹かれあっていて、いつか一緒に演奏したいと望んできました。
月日が過ぎ、ある日、フォルカーが電話をくれました。
そこからはすべてが素早く進みました。
そうして生まれたのが『スィラ』です。
アーティストの間には、ときに直感のような感覚があります。言葉はいりません。片方が音を奏でれば 相手も音で応える。秘密の魔法のようなものです。
◆ 2人はどんなふうに出会ったんですか?
2001年にセネガルのサン=ルイで出会いました。
国際ジャズ・フェスティバルに出演するために、フォルカーがサン=ルイを訪れたのです。
私たちはサン=ルイ・ジャズ・オーケストラで共演しました。アフリカとヨーロッパのミュージシャンが共演するオーケストラです。指揮者はフランソワ・ジャノー(François Jeanneau)氏でした。
こうしたフェスティバルは、世界中の文化が出会い、結びつく、良い機会になっています。
◆ 異文化との融合は、あなたの音楽に大切な要素だとお考えですか?
音楽は普遍的なものです。
“融合”や“合体”と捉えることもできますが、音楽は音楽だと、私は考えています。
大切なのは、普段の自分を変える必要なく、
他のミュージシャンと交流できること、協力できること、一緒に取り組めること。
フォルカーと活動していると、私は自分のアフリカ文化のルーツを保ちつつ、他の世界も探検できます。
◆ 伝統楽器「コラ」を現代に活かす上でも、こうしたコラボレーションは有益ではないでしょうか?
コラの起源は13世紀にさかのぼります。
以降、祖先から私たちまで、代々受け継がれてきました。
先祖伝来のこの遺産は、私たちのアイデンティティーです。
コラ奏者は過去を奏でます。
演奏の秘訣を後代に伝え残すことは、コラ奏者の務めです。
他楽器の奏者と演奏することでも、コラを紹介し、コラのオーラを広め、コラの歴史がいっそう栄えるのなら、それは最良の道でしょう。
新しい世代にコラの魅力を見出してもらい、コラを知らない若者に紹介できる方法でもあります。
◆ 数々のご活躍に、アフリカの文化使節と呼ばれることもあるのでは?
私はアフリカを愛しています。
でも、自分が使節だとは考えていません。
そんな肩書を自称する気には なれません。
私は単に、アフリカ大陸の一住民です。
私にとって何よりも大切なのは、アフリカの人々の暮らしが向上する「解決策」を探すことです。
◆ 演奏では、どんな情感を表現したいですか?
感情すら超えた、何かでしょうか。
願わくば、私の周りのすべてを伝えたい。
愛、平和、私の人生に触れるすべてです。
私はものごとを、自然に起こるがままにまかせています。
ステージに立つ時も、何を演奏するのか決めていません。
最初の曲だけ決めておけば、あとは自ずと湧き出てきます。
演奏中は別の星にいるようなものです。
目を閉じて 旅立ちます。
どこへ?わからない。
ただ身をゆだねるしかない。とても強い感覚です。
コラは神秘的な楽器で、秘密がこめられています。
その秘密を知りたいとは思いません。
もしも、コラの神秘を見抜いてしまう日がくれば、
私にとってコラは終わりを迎えてしまうでしょう。
だから、コラに自分をまかせるのです。
コラは私に何の害も及ぼさない。
良いことばかりをもたらしてくれます。
この感覚をあらゆる人々と分かち合おうと、努めています。
◆ そんなインスピレーションは、どこから沸くのでしょう?
サン=ルイを流れるセネガル川です。
私の言葉も歌詞も、すべてあの河から生まれています。
私の一部は、あの河辺にあるのでしょう。
あそこに行くと、信じられないようなことが起こります。
他の場では感じられないような情感が沸き上がってきます。
私は音楽が好きで、さまざまな音楽を聴きます。
でも強く刺激を受けるのは、水に関係するものばかりです。
サン=ルイを流れるあの河は、私のインスピレーションの源です。
◆ 熟練コラ奏者として、コラの芸術は教えていますか?
旅が多いので、レッスンは続けていません。
ただ、ワークショップは開いています。
若い世代の関心を集めることは、とても大切です。
昨今、若者たちの興味は、ギター、ピアノ、ドラムなどに向かいがちです。
しかもアフリカ大陸では、こうした楽器はとても高価です。
アフリカの典型的な楽器ならずっと安価ですが、若い世代はあまり興味を示しません。
こうした伝統遺産に興味を惹くには、若い世代に向けた企画が必要です。
ステージで演奏できて、コラを学べるような場を創りたい。
実は、何人かの友人たちと計画を進めている最中です。
コラは受け継がれていかねばなりません。
私たちの務めです。
◆ 今後、どんな方と演奏したいですか?
一緒に演奏したい相手。それはもう、たくさんいます!
セネガルには、共演したい男性シンガーや女性シンガーがたくさんいます。
それに、知名度は高くなくても、
何曲か一緒にレコーディングしてみたい優れた楽器奏者が数多くいます。
選ぶのは難しい。
どんな種類の共演にも、分け隔てなく興味を持っています。
ご覧のとおり、私はフォルカー・ゲッツェに出会って数年のうちに、一緒にアルバムを創ることまで叶いました。
希望さえ持ち続けていれば ...。
ー CD 『スィラ』発売時インタビュー(2008年)より
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