Ablaye Cissoko Interview

アブライ・シソコ インタビュー

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[準備中 (2024年1月現在)]


◆ フォルカー・ゲッツェ氏とコラボレーションに至った経緯は?

 

2枚のソロ・アルバム 『ディアム(Diam)』と『ル・グリオ・ルージュ(Le Griot Rouge)』を発表して、次はソロではない作品を望んでいました。

 

フォルカー・ゲッツェ氏との企画は長年の願いでした。

私たちはお互いに相手の作品に惹かれあっていて、いつか一緒に演奏したいと望んできました。

 

月日が過ぎ、ある日、フォルカーが電話をくれました。

そこからはすべてが素早く進みました。

そうして生まれたのが『スィラ』です。

 

アーティストの間には、ときに直感のような感覚があります。言葉はいりません。片方が音を奏でれば 相手も音で応える。秘密の魔法のようなものです。

 

 

 

 2人はどんなふうに出会ったんですか?

 

2001年にセネガルのサン=ルイで出会いました。

国際ジャズ・フェスティバルに出演するために、フォルカーがサン=ルイを訪れたのです。

 

私たちはサン=ルイ・ジャズ・オーケストラで共演しました。アフリカとヨーロッパのミュージシャンが共演するオーケストラです。指揮者はフランソワ・ジャノー(François Jeanneau)氏でした。

 

こうしたフェスティバルは、世界中の文化が出会い、結びつく、良い機会になっています。 


 

◆ 異文化との融合は、あなたの音楽に大切な要素だとお考えですか?

 

音楽は普遍的なものです。

“融合”や“合体”と捉えることもできますが、音楽は音楽だと、私は考えています。

 

大切なのは、普段の自分を変える必要なく、

他のミュージシャンと交流できること、協力できること、一緒に取り組めること。

 

フォルカーと活動していると、私は自分のアフリカ文化のルーツを保ちつつ、他の世界も探検できます。

 

 

 

◆ 伝統楽器「コラ」を現代に活かす上でも、こうしたコラボレーションは有益ではないでしょうか

 

コラの起源は13世紀にさかのぼります。

以降、祖先から私たちまで、代々受け継がれてきました。

先祖伝来のこの遺産は、私たちのアイデンティティーです。

 

コラ奏者は過去を奏でます。

演奏の秘訣を後代に伝え残すことは、コラ奏者の務めです。

 

他楽器の奏者と演奏することでも、コラを紹介し、コラのオーラを広め、コラの歴史がいっそう栄えるのなら、それは最良の道でしょう。

 

新しい世代にコラの魅力を見出してもらい、コラを知らない若者に紹介できる方法でもあります。

 

 

 


 

"Ce patrimoine,

 c’est notre

 identité"

 

"先祖伝来のコラは

 私たちの

アイデンティティー"

 


 

 

◆ 数々のご活躍に、アフリカの文化使節と呼ばれることもあるのでは

 

私はアフリカを愛しています。

 

でも、自分が使節だとは考えていません。

そんな肩書を自称する気には なれません。

私は単に、アフリカ大陸の一住民です。

 

私にとって何よりも大切なのは、アフリカの人々の暮らしが向上する「解決策」を探すことです。

 

 

 

◆ 演奏では、どんな情感を表現したいですか

 

感情すら超えた、何かでしょうか。

願わくば、私の周りのすべてを伝えたい。

愛、平和、私の人生に触れるすべてです。

 

私はものごとを、自然に起こるがままにまかせています。

ステージに立つ時も、何を演奏するのか決めていません。

最初の曲だけ決めておけば、あとは自ずと湧き出てきます。

 

演奏中は別の星にいるようなものです。

目を閉じて 旅立ちます。

どこへ?わからない。

ただ身をゆだねるしかない。とても強い感覚です。

 

コラは神秘的な楽器で、秘密がこめられています。

その秘密を知りたいとは思いません。

もしも、コラの神秘を見抜いてしまう日がくれば、

私にとってコラは終わりを迎えてしまうでしょう。

 

だから、コラに自分をまかせるのです。

コラは私に何の害も及ぼさない。

良いことばかりをもたらしてくれます。

 

この感覚をあらゆる人々と分かち合おうと、努めています。

 

 

 


 

"La kora est 

 mystique, 

 elle a ses secrets"

 

"コラは神秘的で 

  秘密が

 こめられている"

 


 

 

 

◆ そんなインスピレーションは、どこから沸くのでしょう?

 

サン=ルイを流れるセネガル川です。

私の言葉も歌詞も、すべてあの河から生まれています。

 

私の一部は、あの河辺にあるのでしょう。

 

あそこに行くと、信じられないようなことが起こります。

他の場では感じられないような情感が沸き上がってきます。

 

私は音楽が好きで、さまざまな音楽を聴きます。

でも強く刺激を受けるのは、水に関係するものばかりです。

  

サン=ルイを流れるあの河は、私のインスピレーションの源です。

 

 

 


 

 

 

◆ 熟練コラ奏者として、コラの芸術は教えていますか?

 

旅が多いので、レッスンは続けていません。

ただ、ワークショップは開いています。

 

若い世代の関心を集めることは、とても大切です。

 

昨今、若者たちの興味は、ギター、ピアノ、ドラムなどに向かいがちです。

しかもアフリカ大陸では、こうした楽器はとても高価です。

アフリカの典型的な楽器ならずっと安価ですが、若い世代はあまり興味を示しません。

 

こうした伝統遺産に興味を惹くには、若い世代に向けた企画が必要です。

ステージで演奏できて、コラを学べるような場を創りたい。

実は、何人かの友人たちと計画を進めている最中です。

 

コラは受け継がれていかねばなりません。

私たちの務めです。

 

 

 


 今後、どんな方と演奏したいですか?

 

一緒に演奏したい相手。それはもう、たくさんいます!

 

セネガルには、共演したい男性シンガーや女性シンガーがたくさんいます。

 

それに、知名度は高くなくても、

何曲か一緒にレコーディングしてみたい優れた楽器奏者が数多くいます。

 

選ぶのは難しい。

どんな種類の共演にも、分け隔てなく興味を持っています。

 

ご覧のとおり、私はフォルカー・ゲッツェに出会って数年のうちに、一緒にアルバムを創ることまで叶いました。

 

 

希望さえ持ち続けていれば ...。

 

 

 


ー CD 『スィラ』発売時インタビュー(2008年)より