フォルカー・ゲッツェ監督 インタビュー
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◆ 映画『グリオ』の題材は?
この作品は、アブライ・シソコ氏の世界に入りこむ窓と言えるでしょう。彼はセネガルの「マンディンカ・ジェリ(グリオ)」で、ミュージシャンです(*)。アブライは作品全体を通して、語り手と案内人を務めています。
アブライが語る物語は、僕らが西洋文化圏の日常で耳にしている物語とは随分と異なります。彼らの物語では、家族、友情、敬愛、慈悲などの価値が語られますが、どれも、僕らの日常では失われてしまった、または忘れられがちな要素でしょう。
アブライは何世代も続くシソコ家の末裔です。シソコ家は、「コラ」と呼ばれるアフリカン・ハープの創設家系として知られています。
*「グリオ」には地域や言語グループなどによって、さまざまな呼称があります。マンデ語地域の北部では「jeli」、南部では「jali」などと呼ばれ、どちらも“血筋”や“血”を語源としています。また、「jeli(jali)」は、旧マリ王国(13世紀前半~17世紀)では、王国内のグリオに付される称号でもありました。
"この映画は
マンディンカ・
ジェリ(グリオ)の
世界を覗く窓"
◆ 映画『グリオ』の見どころは?
この作品をご覧になれば、西アフリカの口承伝説の伝統や、地域の歴史の「生き字引」が織りなす世界を覗いていただけるでしょう。
アブライが奏でる音楽には心を揺さぶられます。
また、セネガルの若者が立ち向かっている状況も伝わることでしょう。
そして、口承伝説で伝えられる共同体の記憶と、世界中のアフリカ系文化とのつながりに、理解が深まることでしょう。
◆ 映画『グリオ』で、いちばん大切なテーマは?
ヒューマニティー(人間愛)です。
◆ 映画『グリオ』を制作したきっかけは?
アブライ・シソコ氏と一緒に演奏活動を続けているうちに、グリオの伝統や、西アフリカの口承伝説の歴史について、より深く学ぶことができました。
このドキュメンタリー作品が誕生したきっかけは、僕自身にとっての発見を広く伝えたい、という願いからでした。
◆ 制作チームも素晴らしい顔ぶれですね。人選の経緯は?
2007年に、『Documentary Storytelling(“ドキュメンタリーの伝え方”の意)』という本を読みました。著者はシーラ・カラン・バーナード女史(Sheila Curran Banard)です。
この本のおかげで、僕はサム・ポラード氏の偉業を知ることができました。彼はスパイク・リー監督の数々の作品に参加したことでも有名です。書籍によると、スパイク・リー監督はサム・ポラード氏に撮影フィルムを渡すだけで任せることも多かったそうです。ストーリーの組立は、撮影フィルムを観たサム・ポラード氏にゆだねたということでしょう。
僕はこのエピソードを読んだ途端に、サム・ポラード氏こそ、この映画に最良の人物だと直感しました。作品テーマの方向からも、彼はこの企画に興味を示してくれるかもしれない、と思ったのです。
でもサム・ポラード氏に出会うきっかけを得るまでには、2年間かかりました。実は、演奏の仕事仲間でサックス奏者のボブ・ムーバー氏(Bob Mover)が、サム・ポラード氏と僕の顔をつないでくれそうな人物を知っている、と声をかけてくれたんです。ちなみにボブは、かのチャールズ・ミンガスや、チェット・ベイカーとも共演したミュージシャンです。
チェット・ベイカー・クインテット: ボブ・ムーバー(アルトサックス) / ラーレン国際ジャズフェスティバル(オランダ) 1975年
Chet Baker Quintet: Bob Mover (Alt Sax) / Internationaal Jazz Festival Laren, The Netherlands, 1975
こうして僕は、サム・ポラード氏と、彼が師と仰ぐヴィクター・カネフスキー氏に出会うことができました。そして2人と初対面で話しているうちに、サム・ポラード氏は、ジャズ音楽のレジェンド級ピアニストであるランディ・ウェストン氏の大ファンだということがわかりました。
ランディ・ウェストン氏は僕らが映画のためにインタビューしたピアニストで、15年間にわたりアフリカで暮らしていたこともあります。また、ランディ・ウェストン氏はアブライ・シソコ氏とも面識があります。2007年にセネガルで開催されたサン=ルイ・ジャズ・フェスティバルで、2人は顔をあわせています。
サム・ポラード氏は、ランディ・ウェストン氏を紹介してくれるなら映画制作チームに加わろう、と言ってくれました。そこで僕は彼らの顔をつなぐ場を設け、サム・ポラード氏はヴィクター・カネフスキー氏とともに制作チームに加わってくれた、というわけです。サムもヴィクターも、はかり知れないほど貴重な恩恵を、僕ら制作チームに授けてくれました。
また、ザンネ・クルツ女史の尽力にも感謝しています。彼女はドイツのミュンヘン出身の素晴らしいシネマトグラファーです。仕事熱心な人で、見事な映像をカメラに捉えてくれました。
ボブ・ムーバー
2008年ゲント・ジャズ・フェスティバル(ベルギー)にて
Bob Mover at 2008 Ghent Jazz Festival
Photo by Marek Ślusarczyk
from Wikipedia | Bob Mover
お礼を言いたい方は他にもたくさんいます。ライターのレスリー・マルケイ氏、歴史家のママドゥ・ディオフ教授、エディターのマリー・プランクイ女史(Marie Planqouis)をはじめ、数々の皆さん、本当にありがとうございました。
ドキュメンタリー映画は、愛情に裏付けられた作業から創り出されるものなのでしょう。サム・ポラード氏やヴィクター・カネフスキー氏と一緒に作品を制作できたことは、長年の夢が叶った幸せなひとときでした。
◆ 映像も音楽も見事ですね。それぞれの制作過程は?
くりかえしになりますが、シネマトグラファーのザンネ・クルツ女史の腕は素晴らしいものでした。彼女は僕の親しい友人と同窓生で、ヨーロッパの映画撮影界で数々の最高賞を受賞しています。ザンネは映画が大好きで、商業的な仕事のオファーを辞退してでも、芸術性の高い映画の制作を優先するような人です。
僕ら2人はチームとして制作を進めました。ザンネは撮影を担当し、僕はモバイル録音の経験もあるので音響を担当するといった具合です。
音楽については、心配はありませんでした。
2007年に、アブライと僕は初レコーディングをして、CD作品『スィラ(モテマ・ミュージック)"Sira (Motéma Music)"』を制作しています。僕ら自身でもレコーディングを聴いてみましたが、信じられないような出来栄えでした。まるで他の誰かが演奏しているようで、ショックすら受けたものです。そんなわけで、音楽は先にできていました。
ですから僕がひとえに望んでいたのは、レコーディングした音楽をお届けできる、強い映像作品を創れますように、ということだけでした。
"ドキュメンタリーは
愛情の積み重ねで
創られる"
◆ 映画『グリオ』や音楽作品のアピール・ポイントは?
音楽については、自分の作品についてコメントするのはどうも苦手なんです。
映画は、1度と言わず、ぜひ何度か観ていただけたら...。
ご覧いただくたびに、何か異なる語りかけを感じていただけるような作品、丹念な趣向や精魂のこもった作品に仕上がっていることを望むばかりです。
願わくばこの作品が、ご覧いただく方々の情緒を深くゆさぶり、癒すこと。そして、西アフリカで口承される伝説譚のように、生きとし生ける者の日々のうたかたに触れることが叶うなら、これ以上嬉しいことはありません。
◆ アブライ・シソコ氏からメッセージはありますか?
彼はこのようにコメントしています。
「グリオとして私にできることは、歌い奏でることがすべてです。
演奏の機会をいただくたびに、光栄に感じています。
演奏をするたびに、グリオの文化が伝わります。
これこそ、まさに私の役目です。」
『スィラ』 アブライ・シソコ & フォルカー・ゲッツェ / 2010年 ライブ at ジャズ・ギャラリー(米国ニューヨーク市)
"Sira" Ablaye Cissoko & Volker Goetze Live at the Jazz Gallery 2010 in New York, NY
インタビュー: ボブ・ムーバー & チームメンバー - My Heart Tells Me
Interview: Bob Mover & his team- My Heart Tells Me
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