映画『グリオ』レビュー by マーク・ハリス博士(映画学)

ブリティッシュコロンビア大学(カナダ) 映画研究学講師

映画評論家

 

『ジョージア・ストレート』誌(カナダ)

“バンクーバー国際映画祭: アフリカに視線を向けた作品紹介 (2012年9月26日)”より抜粋

   当レビューは、該当記事の抜粋翻訳です。他作品の紹介部分などは省略されています。

 

 

Griot Review by Dr. Mark Harris (Film Study)

Film Studies Instructor: The University of British Columbia

Film Critic 

Partly quoted from:

VIFF 2012: The Vancouver International Film Festival goes into Africa, "The Georgia Straight"  on September 26th, 2012. - the part related to the film "Griot"

リンクをクリックするとアマゾンの作品サイト『グリオ』に移動します

[準備中 (2024年1月現在)]


アフリカを題材にした映画は、「問題」を取り上げた作品が大半だ。葛藤の核心は、外因性の問題(植民地時代の後遺症としての混乱)、内因性の問題(伝統社会の構造的な脆弱性)、または自然要因(災害や疫病)など、さまざまだ。

 

--- <中略(映画祭の他作品紹介など)> ---

 

映画『グリオ』は「問題」を取り上げた作品ではない。いわば「解決策」を取り上げた作品だ。そして、音楽をめぐる作品でもある。音楽は、アフリカのさまざまな英知や資質の中でも、世界中から多くの称賛を集めている分野と言えるだろう。

 

 

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"Griot is a film

about solutions"

 

"『グリオ』は

「解決策」を

取り上げた作品だ"

 


 

 

もちろん、西アフリカにおけるグリオは「音楽家」の枠をはるかに超えている。映画『グリオ』では、前向きなノンフィクション視点がグリオの伝統に向けられている。この作品が初の映画作品となるフォルカー・ゲッツェ監督は、次のように語った。

 

 

「グリオの影響力はとても強かったようです。かつては、文字で書かれた新聞も書籍も存在していなかったからです。グリオはあらゆる人々の家族歴を知っているので、言葉の力で人を殺してしまうほどの影響力を持っていたといいます。」

 

「たとえば、約束を果たさない王がいたとしましょう。グリオがその王を“悪い方向に”称えれば、一定レベルの紛争を引き起こすことにもなります。あくまでも社会的な話ですが、グリオは奴隷のすぐ上にすぎない階層に位置づけられていたようです。それでも代々の王たちはグリオの支持を必要としていたといいます。」

 

 

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グリオの役目は多岐にわたる。詩人、音楽家、口承による歴史の伝承者、賛辞の歌い手、批判精神や機智の持ち主など、さまざまだ。こうした背景を考慮すると、グリオは「フィリ (*)」に共通点が多いようにも見受けられる。「フィリ」とは、(キリスト教が普及する前の)多神教時代に、アイルランドで栄えた吟遊詩人の文化だ。しかし、この対比はむやみに拡大するべきではなさそうだ。「類似点はあるでしょう。」と、ゲッツェ監督は答えつつ、「ただ、ヨーロッパの社会機能は異なっています。」と続ける。

 

*「fili」、またはスコットランド・ゲール語では「filidh」。

ルネサンス期以前にアイルランドとスコットランドに存在した選り抜きの口承詩人。 (Wiki: Filí)

 

 

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◆ 現存する3つの中世ケルティック・ハープ ◆

[詳細参考サイト] WireStrungharp (譜面なども掲載)

 

◆ The oldest of three surviving Medieval Celtic harps ◆

[Recommended Ref for the details]  WireStrungharp (w/music sheets and so on)

 

トリニティ・カレッジ・ハープ(別名「ブライアン・ボル王のハープ」)

トリニティ・カレッジ(アイルランド・ダブリン)所蔵

 

14~15世紀頃の製作と推定される初期アイリッシュ・ハープで、現存する3つの中世ケルティック・ハープ(ゲール系ハープ)の中でも最古の楽器。左向きの図案はアイルランドの国章やアイルランド発行のユーロ硬貨のデザインに、右向きの図案はギネス・ビールのトレードマークなどに使われている。

 

The Trinity College harp (a.k.a."Brian Boru's harp") 

Preserved in Trinity College, Dublin, Ireland

 

The early Irish harp, dated to the 14th or 15th century. The oldest of three surviving medieval Celtic harps (Gaelic harps). A left-facing image of this instrument is the Coat of arms of Ireland, also used for Irish euro coins. A right-facing image is used as a trade mark for Guinness Beer.

 

Photo by Marshall Henrie

from wikipedia | The Trinity College harp


 

クイーン・メアリー・ハープ

英国スコットランド博物館 所蔵

 

英国スコットランドのクラルサッハ(ゲール語で“ハープ”の意味)。15世紀にスコットランド南西部のアーガイル地域で製作されたと推測されている。ルード地域のロバートソン家とゆかりが深いことから、ルード・ハープとも呼ばれる楽器の1つ。

 

The Queen Mary Harp

Preserved in The National Museum of Scotland

 

A Scottish clarsach which is believed to date back to the 15th century and to have originated in Argyll, in South West Scotland. Also known as the Lude Harp, since the harp has been closely associated with the Robertson family of Lude.

 

Photo by David Monniaux

from wikipedia | Queen Mary Harp


 

 

ラモント・ハープ(別名: クラルサッハ・ルマナック)

英国スコットランド博物館 所蔵

 

英国スコットランドのクラルサッハ(ハープ)。15世紀にアーガイル地域で製作されたと推測されている。ルード・ハープの1つで、カレドニアン・ハープとも呼ばれる。

 

Lamont Harp (Clàrsach Lumanach)

Preserved in The National Museum of Scotland

 

A Scottish Clarsach, which is believed to date back to the 15th century, and to have originated in Argyll. This is one of the Lude Harps, also known as the Caledonian Harp.

 

Photo by Goldbunny 88 

wikipedia | Lamont Harp


 

 

 

相違点として、グリオはかつてグリオ同士で結婚する習慣だったという。また、100%に近い比率で、イスラム教徒だという。そして、グリオの特別な技能は、代々にわたり世襲で受け継がれている。もし音楽の達人であるグリオに後継者がいない場合は、さまざまな技能を継承し続けるために、弟子への後継に期待が寄せられるという。

 

ただし、映画『グリオ』の主人公には、この心配は無用だろう。「彼には約20人の兄弟姉妹がいますから、誰かしらがコラの伝統を守り続けていくことでしょう。」と、監督は語る。

 

 

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映画『グリオ』は、実質的には、フォルカー・ゲッツェ氏とアブライ・シソコ氏のコラボレーションだ。フォルカー・ゲッツェ氏はドイツで生まれ、米国ニューヨーク市を活動拠点とする、トランペット奏者であり映画監督でもある。また、アブライ・シソコ氏は、セネガルの才気あふれる若手音楽家で、ゲッツェ氏とはさまざまなコンサートで共演を重ねる仲間だ。まさに音楽界で言うところの「a long time a-comin'」、待望のコラボレーション作品と言えるだろう。

 


 

"Griot has been

 a long time a-comin’"

 

"『グリオ』は

  待望の

  コラボレーション"

 


 

 

「作品の着想を得たのは2007年10月でした。」と、監督は回想する。「そして2008年2月に撮影を始めました。短編映画や音楽映像なら、これまでにもいくらか経験がありましたが、映画作品としては初になります。」適切な技術陣を集めるまでに、数年の歳月を要したという。しかも、助成金獲得のハードルは常に高い。

 

 

「実は、バンクーバーの映画祭が『グリオ』の初上映となります。」とゲッツェ監督は語る。

 

--- <中略(2012年初上映時の配給見通しなど)> ---

 

ここにまたひとつ、見逃すことのできない「非ハリウッド製」の系譜が誕生したと言えよう。

 

 

 

 

 



 

-> More from The Georgia Straight 

VIFF 2012: Griot brings a culture to the forefront by Alexander Varty

on September 26th, 2012

 

- R.I.P. Dr. Mark Harris (- February 26, 2013)

『ブーバ』 ライブ演奏

ミュンヘン国立歌劇場にてライブ演奏(2011年7月) 

feat. アブライ・シソコ & フォルカー・ゲッツェ

 

Bouba Live at the Bayerische Staatsoper München (July 2011)

Feature: Ablaye Cissoko & Volker Goetze

 

 

ニューヨーク芸術財団(NYFA) 移住芸術家プロジェクト (2010年) feat. フォルカー・ゲッツェ

(画面左) プロジェクター画像 / (画面右) ライブ演奏

 

NYFA (New York Foundation for the Arts) Immigrant Artist Project (2010) Feature: Volker Goetze

Projection Video (left) / Live Performance (right)

 

[参考] NYFA (New York Foundation for the Arts): ニューヨーク芸術財団 

 

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"FARO"

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If there is no peace, the forest frightens us.

Where are you going?

I am going into the forest.

Let's be prudent.

Peanut, millet, corn are ripe.

We have to go back in the fields.

Pray to God for peace to reborn.

Appeal for the hight sun.

For the hight moon.

You, parents, pray for the children. 

For peace to come back because with peace everything can reborn!

 

Music: Volker Goetze

Lyrics: Ablaye Cissoko

Cinematography: Sanne Kurz

Additional Cinematography: John Morelli, Leslie Mulkey

Editor: Marie Planqouis, Volker Goetze

 

Producer / Director: Volker Goetze

 

 

 

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"TONGA"

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Music: Ablaye Cissoko & Volker Goetze Duo

SuperDraw: Joshue Ott